
鳥居礼
無理をしないから、本気になれる。
ワクワクを成果に変えるEC・AI支援。
スキルセット・支援事例
「ワクワクするか。無理してないか。この2つで決めています」
人生で大切にしている価値観を聞くと、返ってきたのはこの言葉だった。
ECディレクター鳥居礼。現在はEC領域を中心に、戦略設計や広告運用、商品ページの改善、AIを使った業務自動化まで手がけている。実質一人で10社を超える店舗を見ながら、約30本の社内ツールと、毎日・毎週・毎月自動で動く約25本の処理を自らつくっているという。
ここだけを見ると、かなり働いている人に見える。それでも本人は「無理をしていない」と話す。
「無理をしなくて済む形を、先に作りにいくという意味です」
根性で仕事量をこなすのではなく、仕組みにできるものは仕組みにする。人がやらなくてもいいことを減らし、自分は考えることや判断することに時間を使う。一方で、仕事として結果を出すことには厳しい。売上だけを見るのではなく利益まで見て、必要なら戦略を考えるだけでなく自分で手も動かす。
鳥居さんは昔から努力できる人だった。ただ、その努力をどこに向けるかは、少しずつ変わってきた。
学生時代は、人からどう見られるか。今は、自分が本当にやりたいと思えるか。
その変化をたどっていくと、鳥居さんが言う「ワクワク」と「無理をしない」の意味が見えてくる。
こんな方の力になれます
売上は見ているが、利益まで追えていない方
モール運営の作業に時間を取られ、考える時間がない方
手作業を減らしたいが、何から自動化すべきか分からない方
ワクワクするか。無理してないか。この2つで決める。
インタビュー本編
他人の評価を追いかけていた——「無理できる」努力家が、自分の軸を見つけるまで
子どもの頃は、外で体を動かすことが好きだった。恐竜や宇宙など、まだ知らないものにもよく惹かれていたという。
「未知なるものにワクワクするというのは昔からですね。想像したら、すごく会いたいな、見たいな、みたいな感じです」
母親は専業主婦をしながら趣味でピアノを教え、父親はエンジニア領域のプロジェクトマネージャーとして働いていた。家庭は本人いわく「放任主義」。両親から何か特定の価値観を受け継いだという感覚はあまりないが、興味を持ったものを止められるような環境ではなかった。
一方で、進路を決める頃になると、周囲の目を強く意識するようになった。親から言われた「いいところに行きなさい」という言葉を真に受け、「いい学校に行かないといけない」と考えて勉強した。
高校受験では第一志望の公立高校に落ち、私立高校へ進んだ。大学受験でも早稲田大学には現役で届かなかったが、浪人して翌年に合格している。
「無理できるんですよね。目標を決めたら絶対達成するというマインドになっていました」
今の「無理をしない」という価値観とは、ずいぶん違って聞こえる。当時の鳥居さんを動かしていたのは、自分がどうしたいかというより、他人からどう見えるかだった。
目指す学校を周囲に自分から話していた。言ってしまった以上、落ちたと思われるのが嫌だった。親に対して申し訳ないという気持ちもあったという。
「社会人になるまで、他人からどう思われているかを第一に生きてきた、薄っぺらい感じでした」
他人軸だったとはいえ、本人なりにはワクワクしていた。褒められること。「すごい」と思われること。そこに気持ちが動いていたから、そのためなら頑張れた。
その生き方が一度止まったのが、大学時代の就職活動だった。テレビや広告など華やかに見える業界を志望したが、ほとんどの会社の面接で落ちた。
「キラキラしているところで働いて、自分カッコイイなって思われたいっていう軸だったんです」
今振り返れば、志望動機もやりたいことも浅かったという。大学時代から薄々感じていた違和感と、ここで正面から向き合うことになった。
考え直して出てきたのが、「会社に雇われなくても、自分の力だけで生きていけるような人材になりたい」という目標だった。そのために必要なものを、営業、マネジメント、マーケティングの3つに分け、この3つを身につけられる会社として楽天を選んだ。
「元々薄っぺらくて抽象度が高かったのを、具体で芯から話せるようになった。そんな感じです」
本人に「なぜ変われたのか」と聞くと、答えは「危機感」だった。
「このままの状態で40、50になった時に、自分のスキルがなくて周囲に流されつつ、自分の軸もなく変なおじさんになりたくなかった」
誰かに評価されるために頑張ることから、自分がどうなりたいかを考えて頑張ることへ。ここから少しずつ、鳥居さんの選び方が変わっていった。
全国1位でも、続けられなかった——成果の先で気づいた「やりたいこととの乖離」
楽天に入社した鳥居さんは、楽天市場の出店営業を担当した。
営業は最初から順調だったわけではない。特に苦労したのが、論理的に考えながら商談を組み立てることだった。それでも少しずつやり方を変え、営業成績は上位10%ほどまで上がった。
その後、楽天モバイルの立ち上げに伴って異動し、営業で全国1位を取る。理由を尋ねると、答えはかなり具体的だった。
「他の人がやっていないことを徹底してやっていました。提案の質と量を両方とも上げていったということです」
量を増やすため、誰にも触られていない案件を探して「僕にください」と取りに行った。代理店も増やし、自分一人の活動量だけで数字をつくるのではなく、売れる経路そのものを増やした。
質を上げるためには、社内に残っていた成功資料や商談録画を見返した。うまくいった部分を抜き出し、自分の提案へ入れていく。
「同じことを別の人がやっていても1番になれたと思う」と本人は話している。
才能で勝った、とは言わない。使えるものを集めて、試して、改善する。この姿勢は、現在の仕事にもそのまま残っている。
その後マネージャーとなり、営業とマネジメントには手応えを持てるようになった。次はマーケティングを伸ばしたいと考えて異動を希望したが、すぐには動けなかった。
同時に楽天モバイルのローンチ時期が重なり、残業時間が月200時間ほどになることもあった。結果は出している。役職もある。外から見れば、うまくいっていた。
それでも続かなかった。
「自分のやりたいことと、足元でやらなきゃいけないことの乖離がすごくて、寝れなくなって辞めたみたいな感じなんですよ」
鳥居さんにとって、仕事量の多さだけが問題だったわけではない。やりたいことは別にあるのに、毎日の時間がそこへ向かっていない。そのズレの方が大きかった。
転職ではなく独立を選んだ理由もそこにある。
「会社に勤める限りは、この現象は絶対起きるんだと思ってて」
2020年11月、会社を辞めた。
最初に始めた事業は営業代行だった。大学生を集めてインサイドセールスのチームをつくったものの、実際には採用して、育てて、辞めたらまた採用する。その繰り返しになった。
「これは全然面白くないなと思って。事業をピボットしようと思って辞めました」
得意だった営業だからといって、その事業にこだわることはしなかった。その後、楽天時代の先輩の会社でEC運用ができる人を探していると知る。
経験は十分ではなかった。それでも、
「できないけど、やらせて」
と頼んだ。
知らないことや、難しいこと自体を避けたいわけではない。自分がやりたいと思えるなら、覚えればいい。その選択から、現在につながるECの仕事が始まった。
無理をしないから、本気になれる——戦略から実行、AIまで「困った」を仕組みで解決する
現在、鳥居さんは株式会社ナレッジブリッジの代表として、ECの運用やコンサルティングに携わっている。
自身の強みについては、こう話す。
「経営者目線での課題解決も、現場レベルでの課題解決も、両方できること。それが一番の強みです」
売上だけを見て終わらない。原価、楽天の手数料、広告費、送料、固定費まで含めて、その月に利益がいくら残ったのかを見る。広告なら、いくら使えば売上がどこまで動くのかを過去の数字から考える。在庫もSKUごとの販売実績を見ながら、何をいつ発注すべきかまで判断する。
その一方で、商品ページの修正や広告入稿、CSV更新といった実務も行う。
「戦略を描く人は手を動かさないし、手を動かす人は事業の数字まで見ない。僕は、そこを分けずにやってきました」
もう一つ、大きな特徴がAIと自動化である。現在、実質一人で10社を超える店舗を担当し、約30本の社内ツールと、毎日・毎週・毎月自動で動く約25本の処理を自ら組んでいる。
楽天の管理画面に関する4,252本のマニュアルも取り込み、規約上できることかどうかを、自分の記憶だけで判断しなくて済むようにしている。
「人が減るという話ではなくて、人がやらなくていいことが減る、という話です」
人が毎月何十時間も使っている作業なら、仕組みにできないかを考える。
「時間で殴らずに済む形を作ってきた結果として、無理をしていない状態が保てている。そういう順番です」
鳥居さんの言う「無理しない」は、無理が起きる構造を、そのままにしないということだ。
inc.合同会社と出会ったのは、事業をもう少し大きくしようと考え、案件を紹介する会社とのつながりを増やしていた時期だった。
参加した理由もシンプルだった。
「モールのスペシャリストがいない状況だったと思うんですよ。あんまり力を入れている人がいないから、輝けるなって単純に思った感じです」
自分の得意分野を必要としている場所があり、そこで結果を出せると思った。
今は、紹介について「紹介する側が信用を貸してくれていること」だと考えているという。だから、まずは任された仕事で結果を返したい。
「シンプルに売上とか利益を上げてあげたいっていうところがあります」
今後はモールだけでなく、自社ECや商品企画など、より上流から利益をつくれる領域にも力を広げていきたいという。
ただ、事業を大きくすること自体が人生の目的ではない。
「奥さんと家族と友達と、楽しく幸せに過ごしたい。それが全部の目的です」
特に好きなのが、長期休暇に妻や家族と祖父母の家へ行く時間だという。
「あの空間が本当に幸せで、これをずっと続けられる状態でいたい」
だから、自分がいなければ止まる仕事にはしたくない。休んだら会社も止まる。それでは、自分が一番大切にしたいものを守れない。仕事を自動化する理由も、突き詰めるとここにある。
鳥居さんは、昔からよく頑張る人だった。他人から認められるために頑張っていた時期もあった。今は、自分が何を大切にしたいのかを決めたうえで、そのために必要な仕事を選び、必要な努力をする。
「ワクワクするか。無理してないか」
その言葉は、自分の人生を、自分で選ぶための基準なのだと思う。